風水が必ずしも正しいというわけではない

弘せりえ

2014年11月15日 10:24



そういうお客さんも多いようで、店側も、風水の表みたいなものを用意してくれている。
カーテン売り場の責任者らしき店員は言う。
「風水が必ずしも正しいというわけではないんですが、何事も悪いよりは良いほうがいいですし、もし商品選びに悩まれているのなら、ご参照ください。でも私どもは、お客様のフィーリングが一番大切だと考えておりますので、お気に入られたカーテンが風水のラッキー・カラーでなくても、ご自身のセンスや直感を大切にしてくだい」
ひとつのツールとして風水を提示しつつも、最後は自分で決めろ、というオブラートに包んだアドバイスが、店員のキャリアを感じさせた。

一方奈美は、自分もそのつもりだったらしく、リビングには小さなお花柄のカーテンを選び、風水で色をチョイス、でも、自分の思っている色の方がよければ、風水却下で、自分のイメージを大切にした。温かい薄桃色の生地に、点々と小さなお花が散りばめられたカーテンは、リビングで過ごす時間をなごませてくれるだろう。

ダイニングは自然系を選ぶ奈美。森林浴ができそうな爽やかなものになった。さすが絵本デザイナーだけあって、いい趣味をしていると、祐介は感心する。

最後に、寝室のカーテン。
また笑いがぶり返しそうになった奈美をつねる祐介。
しかし、なんだかんだ言いつつ母鳥のワキ毛羽根布団を購入してしまっているので、やはりその発想から抜け出せない。
奈美はくすくす笑いながら、店員に
「鳥とか羽根をイメージした柄はないのかしら?」
と聞く。
「なんでカーテンまで、鳥にこだわるんだよ」
小声で抗議する祐介に、奈美はふふん、と笑う。
「だって私たち、酉年じゃん。それにさっきの羽根布団・・・」
笑いかけた奈美の口を祐介は思わずふさいで店員にたずねる。
「す、すいません、そんな柄って、ないですよね?」

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