転職した奈美

弘せりえ

2014年11月11日 11:18



クリスマス・パーティなども大がかりに行い、何人かのカップルを誕生させた。
しかし不思議と、二人が付き合い始めたのは、奈美が今の、絵本デザイン会社に転職してからである。
それまでも、なんとなくお互い好意は持っていたが、せっかく祐介が誘ったバーで、奈美が眠り込んだり、と、ちぐはぐな関係が続いていた。

そんな奈美が転職することを聞いて、祐介は改めて自分の気持ちに整理をつけた。
このまま奈美を手放してしまっては、なんと空虚な毎日となることだろう。祐介がそこまで思いつめていたかどうか、今では定かでないが、とにかく、奈美の転職を機に、二人の交際が始まった。

祐介はプライベートで奈美に会えることで、ますます仕事をがんばれたし、奈美も転職してばかりで不安なときに、何度も頼り甲斐のある祐介に支えられた。

そして、今年の春、転職からわずか3年で、奈美は絵本デザインの賞を取った。
奈美本人よりも喜ぶ祐介。それを見て、奈美は、ずっと祐介といたいと思った。そして
祐介が成功したときは、今と同じくらい、喜んであげたいと思った。

しかし二人の個性は正反対で、祐介は見た目チャラいわりには、家族思いで、地に足がついた堅実家だった。
一方奈美は、見た目は大人しいお嬢様風だったが、どこか浮世離れしていて、突飛な発想で、社会生活にさし障りがない程度に、いい加減なところがあった。
たとえば、祐介が真剣に人生相談していても、奈美のほうを見れば、口を開けて、眠っている。
そんな呑気さに、祐介は時に腹をたてたりもしたが、つまるところ、やはり女性のほうが強いんだな、と失笑したりもした。

二人はカーテン売り場に着いた。
奈美は風水をもとに、カーテンの色や柄を選んでいく。

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